酒瓶を抱いて

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 愛犬の死を書くのは、どうもダシに利用している気がして今までは避けてきた。それでも一度こうして文章にしないと、私自身が愛犬の死と、愛犬を失った自分と向き合えない気がして、今回キーボードを叩いてみた。未だに視界が濡れてしまうのが恥ずかしいが、これまで踏み出せなかった一歩を、方向の正否はどうあれ、進めることができた。  晴れやかな気分などはない。ただ、「愛犬」と抵抗なく書ける自分に、浅ましさと安心を覚えるだけである。  今夜も私は、愛犬と自分に献杯する。そして眠る。酒瓶の代わりに、思い出と悲しみを抱きしめながら。
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