エピローグ

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エピローグ

 この悔しい感情も。  誰かを殺したい程憎んだ感情も。  誰かを嘔吐をしてしまうほど、嫌った感情も。  あいつらは、いつか忘れてしまう。  だからしつこいだのなんだの、言えるのだ。  言われた本人は、一生忘れないのに。    でも多分、言われた私もいつかは忘れる。  私がこのクソみたいな学校を卒業して、成人して、就職をして。  同窓会に行ってこのことを話した時、きっと私も話した相手も、「懐かしいねー。」などと言うのだろう。  そんな言葉で片付けられて堪るか!    そんなことを考えている今この瞬間も、手から砂がサラサラ零れ落ちていくように記憶が消えていく。  だから後悔などしないように全力で生きるのだ。  生きなければならないのだ。  そして、ちゃんと覚えていなくてはならないのだ。    甘酸っぱい恋の記憶も。  中二病という病にかかった記憶も。  兄弟が行方不明になった記憶も。  全部。  「思い出す」なんてことをしなくても済むように。    ちゃんと覚えていなくてはならないのだ。  
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