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そしてその日の朝、私はスタッフに叩き起こされる。
寝ぼけ眼でドアを開けると、監督をはじめとする複数のスタッフが、ずかずかと入ってきていきなり詰め寄られた。
「おい、いったいどういう事だ」
「何してくれてんだ、てめえ」
怒気をはらんだ責め言葉にようやく目が覚めたが、状況はまだつかめてなかった。
すると、監督が雑誌を開いて目の前につきだした。それには私が路上で女を襲っている写真が見開きで載っていて、
[地に落ちた元アイドルの乱行、地方公演での実態]
とタイトルがついていた。
「なんだこれは」
「なんだこれはじゃねぇ。記事によると呑み屋でのばか騒ぎじゃ満足出来なくて、あちこちの地方で素人に手を出してると書いてある。なにしてるんだよ」
今では二誌しか残っていないが、この頃は写真週刊誌というのがはじめて出版され、その爆発的な売れ方に他の出版社が続いて写真週刊誌を続々と出された時期だった。
監督が持っていたのは、どこかの出版社の写真週刊誌創刊号で、私の記事はトップ記事で扱われていた。
そしてようやく気がついた。どうやら私は嵌められたらしい。
私は事情を説明したが、普段の行いが祟って、みんな半信半疑だった。
今なら、ネット拡散、役者謝罪、公演中止の流れだろうが、当時は来られたお客さんに騒がして申し訳ありませんと謝るだけですみ、公演は続けられた。
だがしかし、その後が響いた。
テレビのワイドショーがあの写真を何度も取り上げ、獲物をみつけたとばかりに他の出版社も私を追いかけ回し、有ること無いこと書かれイメージが悪くなり、ついには人気が陰り、干されて、職を転々とする日陰の人生を歩くはめになったのだ。
思い出したくもない写真だった。それが何故今ごろ、どうしてここに……
裏返してみるとそこに文が書かれていた。
突然のお手紙ですいません、私はこの写真を撮った時のグループのひとりです。
どうしてもお詫びしたくなり連絡させてもらいました。
この写真は、ある人に頼まれたものです。
あなたの面白い写真を撮るためのドッキリだと言われ、お金も貰えるというので、みんなでやろうという事になったのです。
頼まれたポーズを撮ることができたので、お金を貰い、その人とはそれっきりで、誰だかわからないままです。
後日、あなたのスキャンダルに使われて驚きました。みんなで本当の事を言おうか相談しましたが、怖くて言わない事にしました。
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