いる。

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 わたしがそれを体験したのは何にも予定がない日曜日のことだった。その日は連日の仕事の疲れや最近ハマってる海外ドラマを夜遅くまで見ていたせいで昼ぐらいまでグッスリ眠っていた。  まぁ休みの日だからといって予定もなけりゃ彼氏がいるわけでもない。仕事に行かなくてもいいならそりゃあこんな時間まで寝ちゃうよねと自分に言い聞かせながら、ボサボサになった頭を整えていた。  さすがにこんな時間まで寝てたからちょっとお腹が空いてた。なにか適当なものでも食べようかと思ってたんだけど、買い物に行くのを忘れていたから冷蔵庫にはなにもない。となるとこのまま部屋にいるのもなぁってことで、適当な部屋着から一応外に出ても恥ずかしくない程度の服に着替えて出かける準備をした。  ちなみにだけどわたしは父とお母さんと猫の三人と一匹でそれほど広くもない二階建ての一軒家で暮らしていた。二歳下の妹からは県外の大学でキャンパスライフを満喫しているとこの間LINEがきた。人生満喫しているようでなによりだ。……ちょっとだけ羨ましかった。  と、そんなどうでもいいことを考えている場合じゃなかった。こうしてる間にも時計の針はゆっくりながらも進んでいた。慌ててローテーブルに置いてある車のキーを掴むと部屋を出た。  ドタドタとしながら階段を降りる。こんな風にするといつもお母さんに「静かにしなさい!」とよく怒られた。でもその声がないということはお母さんはいないということだ。  玄関にあったスニーカーを履いていると、背後からトットットットット、と小気味の良いリズムが階段の方から聞こえた。あれ? 誰かいたんだ。と思ったけどでも玄関にはお母さんのも父の靴もなかった。となると答えは一つだ。  後ろを振り向くと廊下の奥のほう、リビングの中に入っていく小さな影を見た。ウチの飼い猫だ。
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