祖母の家で……

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 友人の祖母の家というのは地方の中でもさらに田舎と呼ばれるような所にあり、昔ながらの平家建の広々とした家だったそうだ。ただその家に住むのは友人の祖母一人だけで、旦那さんである友人の祖父はもうずいぶん前に他界されてしまったそうだ。なので友人の両親や親戚からもこの家を引き払ってはどうか? と何度も話し合ったそうだが、死ぬなら家族で過ごしたこの家で死にたいという祖母の意を汲みとり、祖母がまだ元気な間はそれを尊重しようということになった。  とはいくら元気といってもそれを鵜呑みにして放っておくわけにもいかないため、年に何度か親戚一同が祖母の家に集まることになっていた。大人組は祖母の家まで距離があるのと、ここまで来ると何もないため色々苦労するということからあまり来たがらなかったが、友人たち子供組は滅多に会えない従兄弟に会えることから友人はこの年に数回の集まりをとても楽しみにしていた。  ところで友人曰く、祖母の家は不思議の塊だったそうだ。祖母の家は友人が住んでいる自宅とは違って、古いだけあって色んなものも当然古かった。電話機はダイヤル式の黒電話だし、家の風呂も湯沸かし器なんてない、昔ながらの薪を焚べるものだった。家自体も広く、子供がかくれんぼできそうなくらい広かったそうだ。  一応、祖母とはいえ他人の家。親からもあまり好き勝手歩き回るなとキツく言い聞かされていたが、祖母は「どうせなんもない田舎だから家ん中くらい好きに遊ばせりゃいい」と許可を得ていたそうだ。ただ一つだけ祖母の家には絶対に入っては行けない部屋というのがあった。ただその部屋というのはいたって普通の襖の部屋だったが、誰も入れないように鍵が無理やりに取り付けれていたそうだ。その部屋は親世代が子供の頃からあったそうで、その頃から鍵はついていたらしい。  友人たちは入っては行けない場所と言われると余計に入ってみたくなったそうだ。ただ戸についているいかにも頑丈そうな鍵をどうやって攻略するか、それが問題だった。どこかに鍵はあるはずだが、祖母の家はとても広く、そもそもどこに何があるのかすらわからない。そうやって頭を悩ませていると、子供組の一人がだったら天井から行けばいいと提案した。幸いにも祖母の家は平家ということもあって、床から天井までの高さはそれほどない。子供でも天井裏には簡単に上がっていける程度の高さしかなかった。  天井から行くことを提案した一人の後について行くと、物置小屋と化している部屋で天井板の一部がずれている箇所があった。
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