祖母の家で……

3/5
615人が本棚に入れています
本棚に追加
/1423ページ
「ここからなら天井伝って部屋まで行けると思う」  どうやらこの従兄弟は一度試したことがあったそうで、天井を伝うことまで出来たものの、途中で怖くなって引き返してきた。そこで今回は何人かで行くことを思いつき今回に至ったそうだ。  しかし子供とはいえ、全員が天井に登ってしまうと流石に大人に見つかる可能性があるため、探索組と見張り組に分かれることに。怖がって行かないという子を除いてじゃんけんで決めた結果、従兄弟と友人ともう一人を合わせた三人でその部屋の中に入ることになった。  タンスを階段がわりにして天井裏へと上がっていく。初めて見る家の天井裏はホコリとカビ臭さが混じって息をするのに苦労した。 「こっち」  従兄弟が慣れた様子で天井裏を這っていく。友人たちも極力音を出さないようにしながら懐中電灯で照らしながら彼の後ろをついていく。そうしないとたちまちどこへ行けばいいのかわからなくなりそうだったからだ。 「ここだよ」  従兄弟がある部分を指し示す。どうやらこの真下が例の部屋の真上に当たるらしい。 「ここからどうするの?」  友人が尋ねる。従兄弟は「ちょっと待ってて」と言うと天井板の一部を持ち上げた。どうやらその部分だけ元々外れるようになっていたそうだ。 「ここから入れると思う」  そうは言うものの、部屋の中がどうなってるのかどうかすらわからないのに入ることはちょっと躊躇われた。もちろんここまで来てと言う気持ちもあったけれど、もし親に見つかったらどうしようという気持ちもあった。 「どうする? 行く?」  従兄弟が友人ともう一人に尋ねる。もしかしたらあの時従兄弟もここで引き返さない? といって欲しかったのかもしれないと友人は後で話していた。  ここまで来た以上行ってみたい気持ちが強かった二人はとりあえず中を覗いてみようということで、天井から顔だけ出して中を覗いてみることに。しかし中は思いの外暗く、懐中電灯で中を照らさないと見えないほどだった。さっきまで部屋のいずれも明るかったこともあって、それが不思議だったそうだ。けれど疑問はすぐに晴れた。  この部屋には窓がなかった。三方が壁になっていて、入り口にあたる襖も閉められている。せいぜいうっすらと襖の隙間から漏れた光が差し込むくらいだった。  部屋の大きさは三畳ほどでそれほど大きくなく、ほとんど物ははなかったそうだ。ただ部屋の奥にある台を除いて。  台には布がかけられていた。あれなんだろ? と聞くと「多分三面鏡だと思う。ウチにもあるから多分そう」ともう一人が教えてくれた。三面鏡にかけられた布にはずいぶん埃を被っていることから長い間使われていなかったことがうかがえた。
/1423ページ

最初のコメントを投稿しよう!