祖母の家で……

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「どうなってる?」  従兄弟が興味津々で聞いてくる。友人は従兄弟と入れ替わるように場所を空けた。従兄弟が部屋の中を覗き込むと「あれなんだ?」と聞いてきたので「三面鏡でしょ?」と言うと、「違う違う。その横」と言ってくる。  さっき見た時には三面鏡以外何もなかったはずなので他にもなにかあったのか? と思ってもう一人に聞くも、何もなかったはずだよと答えた。その言葉が気になって、従兄弟と入れ替わり再び覗き込む。  懐中電灯で部屋の中をくまなく照らす。と、確かに三面鏡の横になにかがあった。さっきまではなかったはずなのに。 「な? あっただろ」 「うんあった」  従兄弟の見たものを確かに友人も見た。ただそれがなんなのかがわからない。天井からでは三面鏡の陰に隠れてしまっていてそれがなにかよく見えなかったのだ。 「何かって何?」  もう一人が聞いてくる。どう説明していいかわからなかった友人は見てみろよともう一人に持っていた懐中電灯を渡した。  そのもう一人が天井から覗き込むと、直後「あ!」と声を上げた。 「どうしよう……ライト落っことしちゃった」  今にも泣きそうな顔で言う。さすがに懐中電灯がないと戻ることが出来ない。それにそのままにして戻ったとしてももしかしたら部屋に入ろうとしたことがバレてしまう。それだけは避けたかった。  悩んだ末、一番体の小さいもう一人を残して従兄弟と友人は部屋の中に入ることにした。平家建ての造りとはいえ、天井から床までまぁまぁな距離があった。それでも親に見つかるよりはということで意を決して中に飛び込んだ。  畳が敷かれていたこともあって、衝撃は思ったよりなかった。部屋の中も天井裏と同じくホコリとかび臭さが満ちていて、早く出たかった。転がっているライトを拾い上げて天井裏に戻ろうとしたが、高さが足りない。物置部屋にいたときはタンスなどを使って登ることが出来たが、この部屋の中には三面鏡しかない。二人はその三面鏡を使って天井裏に戻ることにした。  一旦ライトを天井裏にいるもう一人に投げ渡す。天井から部屋の中を照らしてもらいながら三面鏡を動かそうとする。そういえば従兄弟がさっき言ってたことを思い出す。 「三面鏡の横」  友人が口にすると従兄弟もさっきまで忘れていたみたいでそういえばという顔になった。従兄弟が足元を見るとホコリを被っている朱色の着物を着た日本人形がこちらを見上げていた。お互いうわぁあ! と声が出そうになるのを必死に堪える。 「人形! 人形……か」  三面鏡の陰に隠れていたのは古い人形だった。脅かしやがってなんて悪態を吐きながら三面鏡を運ぶ。三面鏡は思った以上に重く、子供の腕力じゃ持ち上げることは難しかった。でもゆっくりと動かしていると三面鏡にかかっていた布がスルッと落ちた。学校に置いてあるグランドピアノのように黒光りするそれは、布がかけられていたこともあるのか、指紋ひとつなくとても綺麗なものだった。
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