本当に怖いのは……

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 友人がなんとか彼女を宥めるとようやくその重い口を開いてくれた。彼女の話を聞くとどうやらわずかに開いた襖の隙間から誰かがこちらを覗いていたというのだ。友人はその話を聞いてそんなわけないよ、何かの勘違いじゃないか? と言っていたが俺は友人の彼女が発したその言葉に背筋に汗が流れ落ちるのを感じていた。  暑いからじゃない。思い当たるフシがあるからだ。  そこで俺は彼女にいくつかの質問をしてみた。  髪は長かったか?  着ている服は?  どんな特徴があった?  事情を知らなければどれも不思議な質問だったと思う。けれども彼女は震える声で丁寧に答えてくれた。  そして俺は理解した。彼女が一体何を見たのかを。  不可解な出来事に遭遇してばかりいる俺だが実は幽霊そのものというのは見たことはない。せいぜい、『あ、何かいるな』とか、触ってもいないのに物が動いたりだとか、あとは聞こえるはずのない声が聞こえたりとかその程度のものだ。  だが、幽霊を見たことのないはずの俺にはある一つのイメージがある。イメージなんて言い方をするとなんだか漠然とした物言いに聞こえるかもしれないが、俺には“それ”を一つのイメージとしか言いようがない。
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