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上っ面だけの関係性に反吐が出そうだった。
心橋広大(こころばしこうだい)は、四年と三ヶ月付き合った女と別れた。
三十二歳、そろそろ身を固めようと、固める覚悟を決めた矢先のことだった。
男は女よりも精神年齢が幼いという。
心橋の会社の先輩たちは皆口を揃えて笑う。
女は、小学生でも女だ。逆に男は、高校生でも脳内はガキで。社会に出てから、ようやっと、と言う風に体格に見合った精神状態に、成熟してくるのだと言われた。
そういうものか、本当にそういうものなのだろうか。
心橋は、決して自己評価が高い訳ではない。
それでも、自分は同世代の男たちから見れば、地に足の付いた考え方ができる方だと思っていた。
しっかりと物事を見極めて、取捨選択をし、自身の過ちを素直に認め、頭を下げることができる。
顔は良い方ではないが、清潔感を保ち、笑顔を心がける。
はい、と落ち着いた、穏やかな声音で話をする。
一定の年齢になってくれば、顔などただのお飾りになるもので、整った顔や恵まれた身体的特徴などがなくても、普通に生きていくには十分なのだ。
秀でた特技などなくても、それなりに誰かとの出会いは巡ってくるものだ。
巡って、きたのだ心橋にも、遅い春が。
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