夕日シチュー

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夕日シチュー

2匹の子どもを寝かしつけていたマーサは、絵本を読み聞かせながら自分もいつのまにか眠りについていたようです。 カラスのグワーグワーとわめくうるさい声で目が覚めました。 うすぼんやりと瞼を開くと幹の穴からオレンジ色に輝く空が見えました。 「いけないっ!」 食器棚から雪の妖精さんに作ってもらった瓶を取り出すと、急いで木を下りました。 幾重にも木の葉が重なった穴からいくつもの木漏れ日が漏れています。 その中から、1番細く、そして緩やかに流れている光の筋を選びます。 緊張の瞬間、マーサはそっと光の筋に瓶を傾けました。 瓶の中にはとろとろと光が流れ込んできます。 マーサは瓶を取り出すと光が漏れないようにさっとコルクの栓をしました。 それから北の木に向かいました。 そこは何年か前までキツツキさんが住んでいた家なのですが、今はマーサが夕日の保存場所として使っています。 風通りがよくカラッと乾燥しているので保存場所にぴったりだったのです。 今まで取り貯めてきた瓶が眠るその部屋に今日の瓶を丁寧に置きました。 ほとんどの瓶は光っておらずただ静かに眠っています。 ほとんどの人は知らないだろうけれど夕日はワインのようにこうして熟成するのです。 部屋の奥の方には、今日取ってきた夕日よりももっと明るく輝く瓶が何本かあります。 熟成したサインなのです。
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