第1章

1/3
17人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ

第1章

どこかで、かすかに動物の鳴き声みたいな声がする。 立ち止まった私は、あたりを見回した。 「……。…………さん」 「え?」 午前5時。 早朝の住宅街を急ぎ足で歩いていた私は、学生向けアパートのゴミステーションの横でうずくまる女の子を発見した。 「おねえさん……。助けて。た、たす……け……て」 「え? ええー!」 私は駆け寄ると、女の子を助け起こした。 3月初旬の、一番気温が下がる時間帯。女の子はロングコートを羽織っているものの、ミニスカからむき出しの素足が寒そうだ。 「ありがとう……。うっ」 私の手を掴んで起き上がった女の子は、突然その手を離し、顔を覆うと嘔吐した。 「うわぁ」 突然の出来事に飛び跳ねるように退いた私だったが、苦しそうな女の子がかわいそうで、持っている限りのティッシュで彼女の顔や服を拭いてやる。 「おねえさん、ありがとう……。どうしよう。こんなんじゃ帰れない……。おねえさんの家、どこですか? 近くだったら、おうちに連れてってくれませんか?」 「はあ⁉︎」 見ず知らずの私に向かってゲロ吐いて、その上、家に連れて行けですって? しかし、青い顔で再び座り込んだ女の子を見捨てるわけにいかない気もする。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!