1/2

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ

 入相の鐘が鳴る頃、太吉は杣山から下りて仕事から帰って来た。 「お帰りなさいまし。」 「ただいま。」 「ご苦労様です。さぞ、お寒かったでしょう。」  太吉は上がり框にどっかと腰を下ろすと、かんじきを外し、藁沓、笠、蓑を次々に脱ぎながら愉快に話した。 「確かに積もった雪の所為で足は冷えたが、天気が良くて風も穏やかで何より、おめえの作ったおにぎりがとっても美味くて昼間は本当に良い心持ちだった。」 「ふふふ、そうでしたか、それは良かったですね、さあ、さあ、夕ご飯と熱燗を用意しておきましたからまずは囲炉裏の火に当たってあったまってください。」  太吉は女にどてらを着せられながら囲炉裏へと向かった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加