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 見ると、自在鉤に吊るした鍋に巻繊汁がぐつぐつと煮立っておって、その横の灰の上には湯煎するべく酒の入った徳利が3本浸けてある鉄瓶があって、いつもの夕食が載せてあるお膳の横には尾頭付きの鯛がもう一つ用意したお膳の上に載せてあった。  じゃから太吉は横座にいそいそと腰を落ち着けながら言った。 「今晩はめでたいことでもあるのか?」 「はい、あなた様の晩酌のお相手が出来ると思うと、そしてその後のことを思うと、朝から浮き浮きしていましたの。」  この言葉を聞いて太吉は酒を飲む前だというのに茹蛸のように顔が赤くなって、でれでれになってしもうた。
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