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 太吉が囲炉裏の横座で上さんのお千代に掛け布団を掛けてもらって昏々と眠りに落ちておる頃、吹雪が外障子を叩いて障子さすりの音が頻りにしたかと思うと、トントントンと玄関の引き戸を叩く音がした。 「今時分、而もこんな吹雪の中を誰だろう?」  お千代は不思議に思って引き戸の前へ行き、どなたさまですかと聞いてみると、若い女の声でこう言った。 「吹雪の中、独り道に迷ってしまいました。このままでは凍え死んでしまいます。どうか中へ入れてください。」  女が独りで弱っているようなので危険はないとお千代は判断すると、不憫に思えて来て何の躊躇いもなく女を入れてやることにした。 「今直ぐ開けますから。」  お千代はそう言うと、つっかえ棒を外して引き戸を開けた。
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