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「う~ん。ここが静岡県浜松市かぁ。家康様ぁ~、直虎様ぁ~」
春休み、天王寺衣鞠(てんのうじいまり)はバスに揺られてはるばる静岡県浜松市は井伊谷にやってきた。
衣鞠は日本の歴史や文化が大好きな歴女で、徳川家康や井伊直虎の聖地に旅行できるのを楽しみにしていたのだ。
この山奥の井伊谷は大河ドラマでも注目を集めた井伊直虎縁の地で歴女や聖地巡礼マニアには人気の土地である。
「はあはあ、疲れた~😣💦⤵でも・・」
山城だからメチャ険しい山道を登って井伊谷城跡に辿り着いた。かなりキツい道のりだったけど登ってよかったと思う。井伊谷城跡からは浜松の町並みや山や浜名湖がパノラマのように見降ろせる。
井伊家の御初代様が誕生したと伝えられる井戸を拝んで、龍潭寺を見学して、井伊直虎、井伊直政、井伊直親たちのお墓にお参りして想いを馳せながら美味しいお団子やみそまんも食べて衣鞠は絶好調だ。
「あっ、そうだ。山にも行ってみよう」
衣鞠は井伊神社を抜けて山に行ってみた。
この山は幼い頃の直虎たちが駆け回って遊んだと伝えられるスポットだ。
さっき険しい山を登った疲労なんてすっかり忘れて、衣鞠はおとわ(幼い頃の直虎)になりきって山を駆け回る。
「あれ?何だあれは?」
山の中に巨大な御殿御輿が墜落しているのを見つけたので衣鞠は思わず駆け寄ってみる。御殿神輿の中には巫女の姿をした女のコとウサギが倒れていた。
「ち、ちょっと、大丈夫ですか?」
衣鞠は女のコたちを助け起こした。
「う、う~ん」
姫花が意識を取り戻すと目の前に見たこともない女のコがいた。
「お、おのれ、何奴」
姫花は衣鞠から飛びのくと懐刀を取り出して身構える。
「ちょっと姫様、助けてくれたんだから悪い人じゃなさそうミコ。もしかしたらプリキュアかもミコ」
かなり警戒している様子の姫花にミコルンが耳打ちする。
「え~っ、うそ~っ、ウサギが巫女で喋ってる~」
目の前で突然懐刀を抜かれそうになっただけでもショックなのに巫女の格好をしたウサギがいて宙を飛んだり喋ったりしているので衣鞠はすっかりパニくっている。
「ちょっと落ち着くミコ」
巫女の姿のウサギの妖精ミコルンがかいつまんで事情を説明した。
「ふ~ん、そのバッドエンドとかって悪者と戦うために伝説の戦士プリキュアを探してるんだ」
「飲み込み早っ」
説明はかなりかいつまんだのにあっさりと理解して、普通の人には現実離れしたようなこともあっさりと受け入れてしまった衣鞠の順応力には姫花もミコルンも驚いた。
「だったら~、一緒に探してあげるよ」
と衣鞠が満面の笑顔で言うものだから姫花もミコルンも唖然として困惑する。
「プリキュアはそんなに簡単には見つからないミコ」
「今までずっと探してきたけど見つからなかったんだから」
とミコルンも姫花も否定的なことを言った。関係ない一般人の衣鞠を巻き込まないために遠ざけようとしたのだが・・
「そんなのやってみねば分からぬではないか」と衣鞠はどや顔をする。
「井伊直虎様のお言葉なんだけどね。伝説の戦士プリキュアかぁ。どんな人かな?きっと直虎様みたいな超素敵な人ね」と衣鞠はワクワクして大乗り気である。
「それにしても派手にやられたものね」
化蜘蛛に襲われて姫花たちの移動手段&基地である御殿神輿はかなりやられてしまっている。
「それじゃあ直そうか」
と衣鞠は瞳をキラキラさせて御殿神輿の修理に取りかかる。
大変なのは一目瞭然なのに事もなさげに言う衣鞠に姫花もミコルンも唖然とする。
「直そうかって、できるの?」
「難しそうだね~。でもあたしは諦めないよ。かの平賀源内さんだってどんなに難しくても諦めずに色々なモノを発明したのよ」
と衣鞠は江戸時代の発明家平賀源内のことを持ち出して嬉しそうに笑っている。
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