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「姫様~、衣鞠~」
衣鞠と姫花を探すミコルンは見た。
どす黒いオーラが漂い、激しい地割れを起こして滅亡の邪鬼が再び現れた。
「来た・・」
「世界は滅んでしまう」
力を回復して猫耳の女のコの姿に戻ったあや猫とこと猫はぶるぶると身を震わせる。
「大丈夫よ」
「任せて」
衣鞠と姫花はふたりに微笑むと決意に満ちた瞳で邪鬼を睨んで印籠を取り出す。
「プリ変化」
ふたりが印籠をかざして変身のポーズを決めるとカモーンという音声がして眩い光の中でふたりは着物のような戦闘服を身に纏う。
「温故知新、繋がる歴史、キュアヒストリー」
「古今東西、繋がる物語、キュアストーリー」
「勇者の力が今」
「我らプリキュアの手に」
プリキュアの家紋が大きく光って、ふたりの勇者プリキュアはカッコよくポーズを決める。
「あ、あれは・・よかった、無事だったミコ~」
プリキュアの登場を見つけたミコルンは瞳を潤ませてふたりのもとへ飛んでいく。
邪気はふたりのプリキュアをめがけて金棒を振り回す。何とかかわすが、凄まじい風圧がプリキュアを吹っ飛ばす。
「負けるワケにはいかない。だから、ただ勝つのみ!無敵の軍神よ、我に力を」
キュアヒストリーの印籠に立ち葵の家紋が光り、鹿の角のような兜を身に纏う。
生涯57回もの戦でかすり傷ひとつ負ったことがなく常に勝ち続けた徳川四天王最強の軍神と言われる本多平八郎忠勝の力がキュアヒストリーに託される。
「行くわよ、蜻蛉斬」
本多平八郎忠勝が愛用していた超巨大な槍蜻蛉斬をぶんぶんと振り回してキュアヒストリーは勇猛果敢に邪鬼に立ち向かう。
「小さくても巨大な敵に勝つ力はこれよ」
キュアストーリーは一寸法師の姿になり、ちょこまかと動いて巨大な邪鬼の腕や肩を跳び移って剣で攻撃を加えてダメージを与えていく。ちょこまかと体のあちこちを跳びはねて攻撃をしてくるキュアストーリーに邪鬼は苛立って完全にペースを崩している。
「なるほど、一寸法師ね。ああやって戦えばいいのね」
キュアヒストリーもちょこまかと邪鬼の腕や肩を跳び移って蜻蛉斬で邪鬼に攻撃を加える。巨大な蜻蛉斬の一撃一撃が確実に邪鬼に大ダメージを与えていく。
「あんな鎧を身に纏って、あんな巨大な槍を持ってその軽快な動き・・あんたって人は本当にワクワクさせてくれるわね~」
キュアストーリーはキュアヒストリーの戦いを見て感動を覚える。
「はああっ~、え~い」
キュアヒストリーは邪鬼の頭上を跳び越えるほどの大ジャンプをして邪鬼の頭に蜻蛉斬を叩きつける。自慢の巨大な角が破壊されて邪鬼は苦しむ。
「やった、イケるミコ」
ミコルンもあや猫とこと猫も希望に瞳を輝かせて勇者プリキュアの戦いを見守る。
「おいおい、滅亡の邪鬼なんだろ。もっと楽しませてくれなくちゃ困るね~」
真っ黒い着物のような戦闘服を纏った暗黒の戦士が現れた。その手にも印籠が握られている。
「魔王の力よ、邪鬼に力を与えてやりな」
印籠に暗黒の木瓜、ひょうたん、三葉葵の家紋が光り、邪鬼に暗黒エナジーが注がれる。邪鬼は角や傷も治り、益々凶悪な姿になって復活する。
どんな武将も闇の部分はあるものだが、この暗黒の戦士は戦国の三傑、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の闇の部分の力のみを持っているのだ。
「プリキュアが邪鬼を倒してめでたしめでたしとはいかないよ。妖精はその身を焼き、それでも世界は邪鬼に滅ぼされるという黒歴史こそが正しいこの星の歴史だ。わははは」
「な、なんてことを・・何者なの?」
ふたりのプリキュアは突如乱入してきた暗黒の戦士を睨みつける。暗黒の戦士は冷ややかな目線でふたりを蔑むように見返す。
「キュアワールドダーク。最悪の黒歴史、最悪のバッドストーリー、世界の終わりを魅せてあげる」
キュアワールドダークは強力な暗黒エナジーをふたりにぶつける。キュアヒストリーもキュアストーリーも暗黒エナジーに押し潰されそうに体が重く苦しく身動きが取れなくなる。
動けないプリキュアを尻目にパワーアップした邪鬼は破壊を続ける。
キュアワールドダークは氷のように微笑んであや猫とこと猫を見る。
「その身を焼き尽くして滅亡の邪鬼を倒すのがお前たちの使命なんだろう。使命を全うしろよ。我が暗黒エナジーでパワーアップした邪鬼はお前たちがその身を燃やし尽くしたところで倒せはしない。全くの無駄死に終わるのだがな」
キュアワールドダークは念動力であや猫とこと猫を操って邪鬼の元へ向かわせる。あや猫もこと猫も抗うこともできずに邪鬼に向かって飛ばされて体が炎に包まれていく。
「や、やめて・・やめろ~!絶対に死なせない!」
キュアヒストリーは縛られて身動きが取れない中無理をして蜻蛉斬をひと振りした。強力な疾風があや猫とこと猫を吹っ飛ばして邪鬼から遠ざけて体の炎を消した。
だが、強力な呪縛はキュアヒストリーにとてつもない痛みと苦しみを与える。全身がミシミシと軋んで潰されてしまいそうだ。
「約束したんだ。絶対に守るって。妖精がその身を焼き尽くすなんて伝説はここで終わりよ。誰も死なずに邪鬼を倒す伝説に塗り替える」
「フン。今にも潰されそうなお前に何ができる。しぶとく頑張ったのは誉めてやるが、もう力は残っていまい」
キュアワールドダークは冷たく笑いながらキュアヒストリーに錫杖のような武器を突きつける。
「絶対に諦めるもんか。負けない」
身動きが取れなくても、体が軋んで潰れそうでもキュアヒストリーは拳を握って激しくオーラを燃やす。
キュアヒストリーの魂に応えたのか蜻蛉斬が、印籠が眩く光り輝く。
「天晴れな闘志しかと見届けた。厭離穢土、欣求浄土、我等が殿と共に戦った日々の如く、方々、今再び力を合わせようぞ」
印籠に立ち葵、源氏車、片喰、井の家紋が次々に光る。
本多忠勝、榊原康政、酒井忠次、井伊直政・・徳川四天王の力を全てその身に纏ってキュアヒストリーは暗黒の呪縛から逃れてあや猫とこと猫を助けた。
「ありがとうございます。もう大丈夫よ、徳川四天王の皆さんが力を貸してくれてるんだから絶対に負けないわ」
キュアヒストリーの反撃にキュアワールドダークが怯み、暗黒の呪縛が弱まったおかげでキュアストーリーも身動きが取れるようになった。
「派手に見せ場を作ってくれるわね~。わたしも負けてられないわ。全員集合か、だったら鬼退治にはやっぱこれでしょ」
キュアストーリーの印籠に桃のマークが光り桃太郎のような姿に変わる。
「みんな、いくよ~」
キュアストーリーは犬猿雉を召喚して邪鬼に一斉に攻撃を仕掛ける。
「我が暗黒の呪縛から逃れるとはな。少しは楽しませてくれるということか」
キュアワールドダークは錫杖のような武器を振り回す。錫杖からはおびただしい妖気が放たれてキュアヒストリーやキュアストーリーを苦しめる。
「負けるもんか。プリキュア、大音撃。はああ~っ」
キュアヒストリーは三方原の戦いで城に攻め込もうとする武田の大軍をも追い払ったという伝説の酒井の太鼓を打ち鳴らす。
鳴り響く音撃は妖力を打ち消してキュアワールドダークと邪鬼にダメージを与える。
音撃に怯んだ邪鬼に犬、猿、雉の噛みつき、引っかき、突っつき攻撃が炸裂する。
「世界は終わらせも暗黒にしたりもさせない」
「歴史も物語も繋がっていくんだから」
キュアヒストリーとキュアストーリーは邪鬼の体を素早く飛び移って攻撃を浴びせていく。
「はああっ」
「えいや~っ」
そして上空に飛び上がったふたりは蜻蛉斬と剣を邪鬼の頭に叩きつけた。
再び角が潰されて邪鬼は苦しみもがく。
「よし、浄化よ。ヒストリーも手伝って」
キュアストーリーは大きな升をキュアヒストリーに渡した。
「そっか、鬼退治にはやっぱりこれか」
升には大きな豆がいっぱい詰まっている。
「鬼は~外~」
「福は~内~」
「プリキュア、鬼退治ストリーム」
豆は金色に光り輝いて嵐のように邪鬼にぶつけられる。金色に光り輝く豆は邪鬼の暗黒のエナジーを浄化していき、完全に暗黒の力を失った邪鬼は大地に沈んで再び封印された。
「プリキュア~」
ミコルンもあや猫、こと猫も見事に邪鬼に勝ったプリキュアに盛大な拍手を贈る。
「鬼退治には豆まきだと。よくもそんなバカげたことを・・」
世界を滅ぼすという最強最悪の滅亡の邪鬼をまさか豆まきで倒されるとは夢にも思わなかった。バカげたことと言いながら見事に敗北した悔しさにキュアワールドダークは唇を噛む。
「これがわたしたちのイマリネーション、わたしたちの物語よ」
「温故知新ってやつね。そして古今東西悪は許さない」
キュアヒストリーは蜻蛉斬をキュアワールドダークに突きつけた。
「フン、今回はほんの御挨拶だ。次はもっと最悪なバッドストーリーを魅せてあげるよ。首を洗って待っているがいい」
キュアワールドダークは暗黒のエネルギー波をふたりに投げつけて姿を消した。
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