初恋は二度目の恋の中。

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初恋は二度目の恋の中。

「これ、ラストで!NAO」  シャッター音に合わせ、ゆっくりと脚を組みかえる。セクシーに。でも下品ではいけない。あくまでこびる程度に。爪先にまで意識して筋肉を使う。  光と視線の中心にいる俺自身を誰も見てはいない。必要なのは一部分。活躍してるのは脚のみだ。  膝より下に色々な角度からライトが当たる。そこだけが熱いはずなのに、額にまで汗がにじむ。そこに注目を向けるということは、自分自身もそこに集中し、最高のパフォーマンスをしなければならないということだ。 「チェック入ります!」  アシスタントの声に全身の力が抜けた。全身をさらけ出すモデルだろうが、パーツモデルだろうが、緊張感と疲労度合は大差ない気がする。  台の上で次の指示を待つ。恰好的には水族館で芸をするために台に乗せられたアシカだ。一人で想像して、一人で苦笑した。  今年で35歳。自分ではわからないが童顔らしく、さらに身長も体格も良くないせいか、街を歩けば大学生に間違われることもしばしば。  セクシーにも小悪魔にも程遠い男の俺が、脚タレで、それも女性商品専属とか摩訶不思議なことだ。  大人の仲間入りをして随分立つ俺でも、大人の世界の需要と供給にはなかなかついていけない。それでも仕事として成立し、毎日、寝るところがあって食事もとれているのだから文句はない。 「NAOさん、チェックオッケーです」  駆け寄ってくる男性アシスタントから「ありがとう」と、礼を言ってバスタオルを受け取る。一応Tシャツに短パンなんだけど、どうも目のやり場に困るらしい。  目が合うと彼は目線を真下にそらした。嘘じゃない。これは本当に照れているときに出るしぐさだし。バスタオルをサッと腰に巻き付ける。
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