第一章

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 どう父さんを傷つけないように断ろうか考えている時だ。隣で箸を置く音が聞こえて思わず振り返った。 「夕方十八時には帰ってきます。必ずその時間にはお二人に光矢をお返しします」  隆久が深く頭を下げる。俺が戸惑っている間にも父さんが「ありがとう。お願いするよ」と隆久と同じように頭を下げた。  何も言えない間に纏まる話に慌ててストップを掛けようとした時だ。振り向いた隆久の視線に止められて言葉を呑む。 「光矢、母さんの事は父さんに任せなさい。明日は父さんも会社は休みだからな」 「……うん、ありがとう」  素直には喜べずに食事をする振りをして視線を落とした。気遣ってくれる二人には感謝をしている。だが、本当に母さんにちゃんと話を通さずに大丈夫なのかという不安が膨らむ。母さんを苦しめたいわけではないのだ。父さんの事も。  気遣われている。優しい二人に優しくされている。大切な人たちに要らぬ苦労を掛けている。それが何よりも苦しくてもどかしい。  俺がオメガである以上自分勝手な我儘だとは分かっているが、大切な人たちには俺の事なんて気にせずに生きてほしい。  だが幾ら俺が上手く断ろうとしても父さんはきっと俺を出掛けさせようとする。どうしようもなく途方に暮れながら、黙々と食事が終わった。 
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