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「お前ほんと俺の事好きだね」
「ああ好きだ」
机の上で頬杖をしながら茶化す言葉にも隆久は真顔で即答する。隆久はそういう奴だ。
まあ、隆久にしてみれば隆久が直球なのは俺のせいなんだろうけど。実際そういう事を言われたことがあるし、自分でも心当たりはある。
「俺もお前の事好きだよ」
お前が俺に求めている意味とは違うだろうけど、色んな意味で。
軽い声で隠した本心を隆久は理解しているからその言葉に隆久は明確な反応をしない。俺すらもよく理解していない曖昧な部分を明確にでもさせようとするように、真っすぐな瞳で俺を見つめている。
と、朝のホームルームを告げるチャイムの音と担任の声が響いた。
隆久に「またあとで」と告げてくるりと体の向きを正面に戻した。背中に隆久の強い視線を感じていたが、かわす事に慣れている視線に動揺を見せるような事はない。
ホームルームでの担任の話題はやはり自殺したオメガの生徒の事だった。だが話題が分かった途端、唐突にこみ上げてきた眠りに欠伸をすれば不思議と意識がぼんやりとしていくもので、全て聞き流した。
それから退屈な授業をやり過ごしながら昼休みになり、隆久に声を掛けられて学食へと移動する。広い学食にも関わらず、同じく腹を空かせた大勢の生徒で賑わっているせいか実際の広さよりも狭く思えてくる。
加えて学食の入り口付近には購買部が設置されてあり、数がある食事にありつこうとする熾烈な争奪戦が起きているのもあって食堂に入るのも一苦労だ。
「お前何にする?」
長い列に並んで待っていた食券機の順番が自分たちに近づいたのを見て首を後ろに向ける。すると立っているせいで身長差がある為、隆久を見上げる形になる。
「カツカレーとコロッケうどん」
「あー、美味しいよなここのカツカレーとコロッケうどん。おばちゃんたちが作る揚げ物って他でも有名なここの名物だし。俺はどうしようかな」
平均並みではあるが、隆久程俺は食べない。隆久は俺の分もと言って良い程よく食べる。それが全て筋肉になって無駄な贅肉なんて無関係なのだから、羨ましい体だ。俺も筋肉欲しいんだが……。
俺は筋肉がつきにくいようで、我ながら脆弱な悲しい体だ。
悩んでいたら、ベテランの食堂おばちゃんたちの努力の賜物で長い列だったにも関わらずすぐに順番が回ってきた。食券機を上から下にサッと流し見て、なんとなく目についた肉うどんに決めた。
それから学食を受け取り、十分な数の生徒が座れるように多めに用意されている席のおかげでまだかろうじて空いていた席に向き合う形で座る。すると、目の前に置かれたデデン! と、そんな音が聞こえてきそうな大量の食事の内容に、自分の食事をする前からお腹が満たされそうになる。
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