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「いやだったらいやだって!」
私は、分厚い扉の前で、足を思いっきり踏ん張った。
「あんた、本当に往生際が悪いわね。
ここまで来て何言ってんの!?
さぁ、行くわよ!」
「やだったらやだーーー!」
「もうっ!いいかげんにしてよ!
さ、早く早く!もう始まっちゃう!」
「やだーーーーー」
私の絶叫を無視して、さゆみは、右手で扉を押し開け、左手で私をものすごい力でひっぱった。
私は転がるようにホールの中に入れられて…
「あ……」
荘厳なSEに乗せて、真っ暗なホールに急に色とりどりの光が満ち溢れ…ステージの後ろにはSSの大きな文字が輝く。
やがて、スポットライトがステージの上の人物を照らし出して…
「今日も燃え尽きるまで歌うぜーーーー!」
高く澄み切った金属のような声…
それに女性客の悲鳴にも似た歓声が応える。
ホールの中は激しい音と煌びやかな光の洪水で、私は眩暈がしそうになるのを懸命にこらえた。
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