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やがて、じーじーとセミの鳴く暑い夏が終わり、その次に訪れた短い秋が過ぎ去った…
気が付けば、瑠威がいなくなってから、早くも一年が過ぎ去ろうとしていた。
クロウさんとケインさんのバンドには夏の終わり頃オルガさんが加入して、オルガさんとケインさん達はやっと和解したんだって噂が流れた。
それは嬉しい噂だけれど、それと同時に不安な噂も流れた。
それは、瑠威が完全に音楽界からは引退して、地元の農家の娘と結婚したっていう噂…
なんでも、幼馴染の女性だということだった。
こんな噂、ママにはとても話せない。
もしも、これがただの噂じゃなくて本当のことだったら…?
まさか、そんなことはないとは思いながらも、私は不安でたまらない日々を過ごした。
さゆみは、瑠威のその噂のせいですっかり落ち込んでる。
「璃愛…私、これから何を支えに生きて行けば良いのよ~…
あぁ、もうなにもかもおしまいだぁ…」
気の毒だけど…さゆみよりもママの方がもっと心配だ。
もしも、あの噂が真実だったらどうしよう?…考えただけでも苦しくなって来る。
どうか、あの噂がデマでありますようにと、私には祈ることしか出来なかった。
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