虚ろなリアル

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 気が付くと僕は、天井に青みがかった蛍光灯のある真っ白い部屋で、真っ白い椅子に座っていた。  どうやって来たのか、いつ来たのか分からない。  前に一度来たことがあるのは直ぐに思い出した。  その時も、今と同じようなことを考えていたのを思い出した。  全く、これはデジャヴじゃないか。  でも何かが、何かが少し違う。  この場に付属する何もかもは同じだが、何かが違うとだけ漠然と僕は思った。  そして何故かは分からないが、だんだん頭がぼーっとしてきた。  僕の意識はゆっくりと柔らかな微睡みの中に入り、そのまま遠のいていった。  はっとして意識が戻ると、僕は真っ白な下りエスカレーターをひたすら昇り続けていた。  僕は非常に驚いた。  意識が戻る前も、エスカレーターを昇り続けていたらしいからだ。  意識が戻った途端、足を取られて転びそうになったのがその証拠だ。  でも、またすぐに昇る作業に戻った。  時間までエスカレーターから降りても昇りきってもいけないからだ。  横を見ると、何列も同じエスカレーターがあり、他の人も同じことをしている。  みんな必死だ。  この作業の意味? さあ? 分からない。  でもそんなことはどうでもいい。考えたくも無い。  これさえしていればいい。  これさえしてればいいのだ……。  何故かは分からないが、頭がまたぼーっとして微睡みの中に落ちそうになった。  何だろう? すごく心地がいい。  でも何かが変だ。そう何かが変なのだ。  今度はもう、そのまま意識が戻らないかもしれない。  そんな気がする……。
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