1人が本棚に入れています
本棚に追加
残業していた妻が帰宅した。
俺は笑顔で出迎えた。
「食器洗ってあげたよ」
「これとこれ、あと、これも洗い直してくれる? まだ汚れが残ってるから」
妻はカゴをひと目見ただけで言った。
たしかに残ってるけども、そこは大目に見てくれよ。
「掃除機もかけてあげたよ」
「そこの綿ぼこりも片付けてくれる?」
妻は部屋の端を指した。
本当だ。よーく見ると、小さいのが2、3個転がっている。
でも、これくらいは許容範囲じゃね?
「洗濯もしてあげたよ」
「干した通りに乾くからね。シワはできるだけ伸ばしてくれる?」
なんだよ、いちいち文句つけやがって!
残業で疲れてる人間なのに、なんでそんな観察眼が鋭いんだよ!?
ハッ!
さては残業してない!?
じゃあ何してた!?
男だ! 男と会っていたに違いない!!
俺の情報網をなめるなよ!?
すぐさま伝手で証拠を手に入れた!
後日。
例のごとく、残業を言い訳にして妻が帰宅した。
こういう時は勢いが大事だ。相手にひと息つく暇を与えるな!
俺は1枚の写真を突きつけた。
「これを見ろ!」
「合成」
妻は普通に言った。
なんで動揺しないんだよ!!
妻と他の男が並んでいる写真だぞ!?
「背景がぼやけてる。自分の都合のいいように編集したんでしょう? ここにカメラマンが写っているのがわかる?」
妻が指したのは、写真内の瞳の部分。
今のカメラは解像度が高いから、瞳孔に写っているものもわかる。
肉眼ではよくわからないけど。
「あなたが写したのよ。町内会の集まりの時に」
妻はそう言って写真を出してきた。
町内会の集合写真。
くだんの男も写っている。
「私は、あなたの記憶力と注意散漫なのがすっごく心配だわ」
妻はあきれていた。
最初のコメントを投稿しよう!