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 私が目を覚ましたとき、その視線は地面にあった。  夏の暑さが冷えた時期、土も私の頬の温度を低めたかと思ったが、そうでもないようだった。  身体を転がして仰向けになる。そうすると、夕日が地平線に消えていく時間帯だと推察できた。腕時計はつけていないので、時間を確かめれないが。  とりあえず起きあがるか。そう思い、腕立ての要領で起立する。その際、身体に違和感を感じたがどうってことないと、私は気にしないことにした。眠りから醒めたときの浮遊感というやつだろうと、そう考えたのだ。  それにしても、どうして私はこんなところに眠りこけていたのだろう、記憶が曖昧なんだよね。確か友達とかくれんぼしていたはず。  見渡す限りみんないない。私を含めて六人でやっていたのだけれど、全員が消失していた。  まるで神隠しだーーこの連想は先日テレビでやっていた人気映画の再放送を思い出したから生まれたわけではなく、ここが神社だからだ。  栗ヶ矢神社。  私達の住む町、栗ヶ矢町の端にある神社で、私達六人の遊び場だ。  近所にあるから三十段ある階段を昇る必要があるが、公園が埋め立てられたせいで私達のあり余った体力を発散する場所がここくらいしかなくなった。  サッカーもできないのか、と公園が駐車場に変貌を遂げた三年前ーーつまり私が小学一年生のときーーは落胆したものだ。  運動エリアの減少が嘆かれている昨今ではあるが、その時代の波が日本の端のこの田舎町にまで波及しようとは……。  少子化しているなんて、少子化しているのが当たり前の時代に生まれた私には実感がないから、子供も利用できる公共施設が奪われることはただの罰ゲームにしか思えない。  だから、私達子供は結婚して子供をつくりたいと思えないのだ。窮屈な世を後世に味わわせたくない――と思っている変わり者は私くらいだろうが。  巻き込んでしまった全国の子供達よ、申し訳ない。   
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