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部活の時間になったので、文芸部の部室に向かった。僕の通う学校は部室用の小部屋がいくつか並んでいるところがあり、その中で一番図書室に近いのが文芸部の部室だ。
文芸部の部室を開ける。誰もいない。鍵は開いていたから、部長あたりが鍵だけ開けて、図書室にでも行っているのだろう。
文芸部の部室の真ん中には、教室で使われる机が、何個かくっつき大きな長方形の机として存在している。部員はそこのどこかに座って、読書をしたり、なにか文章を書いたり、話したりするのだ。
部室にはそこそこ大きな本棚がある。今まで部員が寄贈した本や雑誌や漫画が並んでいて、その横に細長い木製の棚があり、そこに今まで発行した部誌が置かれていた。
うちの文芸部は結構活動盛んな方だと思う。いつの日も部室には部員が十人ぐらいはやってくるし、たまにしか訪れない部員とか幽霊部員とか、他の部と掛け持ちしている部員も合わせれば、三十人ぐらいはいるはずだ。部誌も毎月一冊作っている。
僕は部員の中では出席率がかなり高い方だ。今のところバイトは長期休みしかしていないし、放課後は部活中心だし、サボる理由もない。今高二の一学期だ。受験勉強で忙しくなる前に、いろいろなものを読んでおきたかった。
だけどそろそろ次の部誌の原稿の締め切りが近づいていたから、今日僕は部誌に何を書くか考えていた。一番窓際の椅子に座って、ぼんやり考えた。
僕はあまり文才がない。小説を書いてもあんまり面白いものができない。だからといって詩作とかはもっと苦手だから、小説にするけど。
書きたい話は特に何も浮かばない。とりあえず暗い話は避けたい。明るい話にしたいというコンセプトしか浮かばなかった。
皆が部誌に書いている小説の内容は、ほとんどが、暗い。自分がいかに教室で空気を読んでいるかとか、取り柄がないかとか、友達がいないとか、夜眠れない日が多いとか、死にたくてたまらないとか、そんなものばかりだ。嫌だなあ。僕も友達少ないし、冴えない方だし、眠れない方だけど、そのことをわざわざ書きたいなんて思わない。なんとか僕だけでも明るいものが書きたいと、部誌を見るたびに思う。そして、文芸部の連中と、どこか相容れないものを感じていた。
じゃあどうして文芸部にいるかというと、子供の頃から文字を読むのが好きだからだ。絵本、母の雑誌、新聞、ネットの掲示板、お菓子の箱の裏の成分表でもなんでも読むのが好きなのだ。内容は、気分が塞がなければなんでもいい。文学性とかそんなのはどうでもいい。
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