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 僕の趣味は読書で、所属している部活は文芸部だ。頭は悪くもないけど、良くもないと思う。成績は上位だけど、そもそも僕の通う高校の偏差値はさほど高くない。県内で中の上ぐらいの位置に属しているそこそこの進学校だ。こんなことわざわざ言わなくても、僕がそんな感じの人間であろうことは、僕の容姿を見れば、皆気づいてしまうだろう。視力は低くて眼鏡を常に掛けていて、外であまり活動しないから色は白くて、筋肉は日常の動作にしか使わないから細い。背丈は平均。そして食事よりも読書の方が好きだから太ってもいない。生活態度がわかりやすく姿に出ていた。なんの意外性もない自分が少し嫌だけど、だからといって意外性を持たせるためなにかするわけでもなかった。顔立ちはなんの特徴もなくて、しぶしぶ掛けている眼鏡がアクセントとして仕事をしている。コンタクトレンズには変える機会がないままだった。眼鏡からコンタクトレンズに変えよう、と皆一体いつ考えるのだろう。  僕は今まで彼女がいたことがない。気にしていないと言うと嘘になる。けれど、好きな女子がいるわけでもなくて、特になにも行動せずにいる。なにもしていないが、「僕みたいな冴えないやつに彼女なんてできるわけない」と卑屈になっているわけではない。  僕はたしかにいい男ではないと思う。女子にモテるわけでもないし、同性から憧れられているわけでもない。だけどそれを理由に極端に自分を嫌いになりたくないと思っていた。  僕は、自分で自分を嫌いにならないように、一生懸命つとめている。陰キャ、もやしっ子、存在感がない、冴えない、うだつがあがない……僕に当てはまる罵り文句なんて、世界には腐るほどある。それらの言葉が自分に当てはまるとかは、あまり考えないようにして、常に心を明るくあるようにしている。人間の心は気をつけていないと、明るくあることができない。僕はそう思う。眠くなる授業、膨大な量の試験、大学受験に向けた模試……何気ない日々には、暗くなってしまいそうなことがたくさんあるから。僕は昼休みに話す友達はいなくて、いつも本を読んでいる。本は心の軽くなるようなものしか読まない。文芸部だけど、読む本が文学的かどうかなんてこだわっていない。読み手を塞ぎこませる本なんて僕は嫌いだ。  なぜ僕がこんなに心の明るさにこだわっているのかは、それなりに理由がある。その理由はこの先を読んでもらえたらおわかりになると思う。          
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