第二話 過ぎ去っていく時の中で

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第二話 過ぎ去っていく時の中で

「何ですと!? 幽霊の正体は、可愛い女の子だったと言うのでござるか!?」  慟哭にも似た田所君の叫びが、教室内に響き渡った。  クラスメイトの視線が一瞬こちらに集まったけれど、声の主が田所君であることを視認すると、皆、いつものことだ、といった感じで視線を戻した。 「可愛いとは、言ってないよ。僕にはそういうの、よく分からないし」 「またまた。照れずともよいでござるよ。今日も、会いに行くのでござろう?」 「え? なんで?」 「欄君が、自ら自分の話をしてくれたのは初めてでござるからな。よっぽど、その女の子に出会たことが嬉しかったのでござろう?」    昨日、幽霊屋敷と呼ばれる屋敷の庭園で、幽霊のような女の子に出会った。何があったわけでもなく、ただ出会い、そして別れた。  話しかけてくる彼女に対して反応を見せることもなく、ましてや自己紹介などするわけもなく、すぐさまその場を後にしたのだ。  といった出来事を、田所君に話した。  当然、僕が人間でないということは伏せながら話をしたわけだけれど、しかしながら、どうして話してしまったのだろう。  人間とは極力関わらないように避けて行動していたはずなのに、これではまるで、自分から歩み寄っているようではないか。  嬉しい? 何がだ?  確かに、彼女と出会った途端電流のような衝撃が身体中に走った。彼女が、幸福をもたらすべき相手、ということだ。  けれど、それに関して特別な思いがあるわけでもない。やっときたか。その程度だ。  あとは、待つだけ。時が来れば、自然と彼女の望みを叶えることになる。そういうものなのだ。  だから、わざわざ彼女の側にいなくても構わないのである。 「面倒だから、田所君の好きなように取ってもらって構わないけれど、また会いに行くなんてことは、ありえないよ」  僕は、作り笑顔でそう言った。    田所君は「もったいない」と言っていたけれど、何がもったいないのか、僕にはさっぱり分からなかった。  人間と関わることが、もったいないとでも?  だとしたら、やっぱり田所君は変わっている。  人間と関わる以上に、鬱陶しく、面倒くさいことなど、ないだろうに。  
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