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そうと分かれば、さっさともたらしてやろう。彼女の望みを、叶えてやろう。
そしてまた、一から生をやり直そう。
なんてことはない。これが、僕の役割。生きる意味なのだから。
「僕は、君に幸福をもたらしに来たんだ」
少女を見据えながら言う。
「どういうこと?」
少女は怪訝な顔を見せた。
それもそうだろう、仕方がない。二度目とはいえ、ほぼ初対面の者に急に望みを叶えてやると言われても、身構えるのも当然だ。
ましてや少女なのだ、見知らぬ男が相手となれば身の危険を感じてもしまうだろう。
僕は一つ深いため息をつき、面倒だが彼女にケサランパサランという生物について説明することにした。
一通り説明し終えると、彼女はあっさりと僕がそのケサランパサランという生物だということを受け入れた。もとより人間ではないことは見抜かれていたのだから、たいして拒絶することもないのかもしれない。
「それで、今回の幸福をもたらす相手があたしってことなんだ?」
「ああ。何でもいい、望みを言ってくれ」
「えっとねえ――じゃあ、空を飛んでみたい!」
「……ええと、ごめん。一つ言い忘れてた。望みは、心の底から望んでいることじゃないとだめなんだ」
「何でもいい、って言ったのに」
彼女は、目を細めて僕を見る。冷たい視線。鬱陶しい。ちょっとした語弊だろう、いちいち気にしなくてもいいではないか。これだから人間と関わるのは嫌なんだ。
「うーんと、どうしようかなあ。あ、魔法、魔法使いになってみたい!」
「本当に?」
「え? あーと、なってみたいかもしれないなあって、感じかなあ……」
「さっき言った言葉を、もう忘れたの?」
「忘れてないよ! でもさ、ほら、魔法とか使ってみたいじゃん。掌から炎をぶわあってだしたり、びゅーんって空を飛んでみたり」
「…………」
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