第二話 過ぎ去っていく時の中で

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  一日目。金曜日。    学校の帰りに僕が屋敷の前に現れると、庭園の中から元気よく蓮の姿が飛び出した。  彼女は「よくぞ来た、まあ入れ」と言って門を開け、僕を庭園の中へと招きいれた。    特別何をするわけでもなく、僕たちは庭園の中の椅子に腰掛け他愛ない話を繰り返していた。  時折、蓮が庭園に咲いている花について語ってくれていたが、正直なところどうでもよかった。 「欄君は、花が嫌いなの?」 「――なんで?」 「いや、なんだかつまらなそうだから」  花が嫌いなのではない。蓮との会話が、面倒なだけである。  けれど、蓮の機嫌を損ねては望みを言ってもらえなくなる可能性もあるので、ここは適当に言い繕っておこう。 「花は好きだよ。だから、もっと教えてくれ」  蓮は、笑みを零す。  何がそんなに嬉しいのか、僕にはまるで分からない。    二日目。土曜日。  やらなければいけないことも特になく、端的に言えば一日中暇ではあったのだけれど、長居するのも面倒なので昨日と同じ時刻ぐらいに屋敷に顔を出した。  僕が屋敷の前に現れると、まるで昨日のデジャヴのように蓮が現われ、その後もまたデジャヴのようだった。    蓮が話した大半は覚えていない。覚えているのは、よくもこんなに話をする事ができるものだ、という妙な感心をしたことだけだ。  せいぜい二時間ぐらいの時を共に過ごしているわけだけれど、僕からはまったく会話を始めていない。全て、蓮からの発進だ。    蓮はずっと、笑っている。何がそんなに、楽しいのだろうか。    三日目。日曜日。  今日はなんとなく、昼から行ってみることにした。  僕が屋敷の前に現れると、いつものように庭園から蓮が現れた。いつもと違っていたのは表情で、歓喜に満ちた表情をしていた。  何か良い事でもあったのだろうかと思案するが、どうでもいいことだったのですぐにやめた。    他愛のない話をして、蓮は病気のため学校に行っていないという情報を得る。    ならば、学校に行きたいというのが望みではないのか、という考えに至り、蓮に望むように言ってみた。けれど、何も起きなかった。
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