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それからどれくらい時間が経ったのだろうか。
俺の口内は散々貪られ、好き勝手された。
だがそれでも気持ちいいと思ってしまうのだから、俺も大概だ。
唇が僅かに離れた頃には俺の腰は立たなくなり、2人の間を銀色の糸がツー、と伝った。
若干のぼせかかった俺はグラリと温泉に倒れ込みそうになる。それをすぐに悠が腰を抱き抱えて支えた。
「ごめんね、颯人がかわいくて止まらなかった」
「…っ、別に。俺だって…」
なんでこんな可愛くない言葉ばかり出てしまうんだろう。だが素直に「気持ちよかった」なんて言うことは絶対できなかった。
キスによって疲弊し、ぼんやりとしてしまった俺はそのまま悠の胸にもたれかかった。
そんな俺を抱きしめ、頭を優しく撫でてくれる。
悠は背中も広いけど、胸も広いんだな、なんて思った。目の前にしっかりした胸板がある。同じ長距離なのに、ヒョロッとした俺と違ってどうしてこいつはこんなに体格がいいんだろう。
なんだか少し憎たらしくなって、悠の胸板にグリグリ頭を擦り付ける。すると悠はが頭上でクスリと笑った。
「じゃれてるの?猫みたい」
「んなっ、違うし!ってか筋肉少し分けろし!」
余裕の表情の悠は憎たらしくて、それでいて様になっている。
「そっか分かった、颯人って猫みたいなんだよ。懐いたと思ったら直ぐ逃げたりするし。気まぐれ猫だね。最近はやっと触らせてもらえたみたい」
そう言って俺の髪をすく。
「茶色っぽい髪も、ぱっちりした目も、腕の中にすっぽり収まる身体も、猫みたいで全部好きだよ」
「俺のことなんだと思ってんだよ!」
俺が少しむっとすると、悠は笑ってごめんごめんと言った。
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