自覚

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少し遅れて陸部の打ち上げがある教室に入ると、そこには既に多くの部員が集まっていた。 卒業生はもちろん、後輩もみんな集まってくれたようだ。 遅れて入ってきた俺に一斉に注目が集まる。 するとそのうちの1人がニヤニヤと声をかけてきた。 「おい、もしかして告白でもされた?」 突然の言葉に驚いて顔が固まりつく。そんな俺の顔を図星と受け止めたそいつは、「やっぱり」とこぼした。 「やっぱり…って?」 「1人ぐらい蒼井に告るってみんな話してたんだよなー。ほら、蒼井くん割と人気ですから」 ふざけたような口調で肩を突かれるが、思い当たる節がなかった。 「もしかして、自覚ないんですか?」 近くにいた後輩に言われる。俺はその後輩の方を向いて言い返した。 「自覚も何も、今まで告白されたことなんてほとんどないから…」 「わかってねーな、蒼井は容姿が容姿だから高嶺の花なんだよ。下手したらその辺の女子より可愛いし、女子からしたら手を出しにくいんだよ」 そんな理由で今までモテていなかったのだと知って、少しショックを受ける。 「でも蒼井先輩って男からはよくアプローチされてましたよね」 「あーたしかに」 「えっ!いつ⁉︎」 俺が叫ぶと部員があきれ返ったような空気を流す。 「…気付いてないなら、それはそれでいいんじゃないか?」 なんだそれ、それで解決になってるのか?
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