自覚

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大丈夫かな…迷惑じゃないかな、なんて思いながら返信を待つ。 すると近くにいた部員が俺のスマホを覗き込んだ。 「ん、誰かとまちあわせするのか?」 「…まぁ。いいって言ってくれたらだけど」 「彼女か?だから告白断ったんだろ」 「彼女なんかじゃねーよ」 素っ気なく返事すると、それ以上深入りしてくることはなかった。 返信がないのでしばらく部員と思い出を懐かしんだり、ふざけたりした。 すると部室のドアがノックされる。 ドアがカチャリと開き、顔をひょっこり覗かせたのは遊佐先輩だった。 「遊佐先輩!」 部員が一斉に遊佐先輩に集まる。 イケメンで頼れる先輩だったからだろう。みんなが犬のように懐いている。 「やあ諸君!卒業おめでとう!」 遊佐先輩はそう言って大きな紙袋をいくつか机に置いた。紙袋には最近都内で話題のスイーツ店のロゴが印刷されている。 「もしかしてこれって…」 俺が呟くと遊佐先輩は満足そうに笑った。 「ああ、シュエールエルメのケーキだ!痛い出費だけどみんなをお祝いしたくてね」 そう言って遊佐先輩はケーキの箱を開ける。 中には宝石のような色とりどりのケーキが入っていた。部員から歓声が上がる。 「でもこれシュエールエルメだし高かったんじゃ…」 「まあ確かに高かったけど、家の会社の手伝いをしたことで臨時収入が入ったんだ」 「会社の手伝いって、もうそんなことしてるんですか」 「と言っても俺はまだまだポンコツだから、従兄弟にかなり手伝って貰っちゃったよ。俺より年下なのに優秀でさ。情けないよな」 そう言うと遊佐先輩は照れ臭そうに笑った。
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