自覚

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「でも蒼井くんは人気者だから?」 さっき部員に言われたのと似たようなことを遊佐先輩が言う。…人気者って? 「色々悩み事が多いんだろうな。だから今は俺のことばかり考えなくていいよ。一つ一つ片付けな」 「……」 「全部片付け終わって、それで俺のところに戻ってきてくれればいいからさ」 なんか、遠回しにすごいことを言われている気がする…。 いつも優しくて、頼れる先輩で、それでいてお兄ちゃんみたいな存在だった。 だけど今、目の前にいる遊佐先輩は、知らない大人の男に見えた。爽やかで、色気とは無縁だと思っていた先輩。 遊佐先輩ってこんなに色っぽかったっけ…? 少し意地悪そうな口元も、切れ長の涼しげな目も、いつもと違って見えた。なんだか無性に照れる。 「は、はいぃ…」 動揺して情けない返事になってしまった。すると遊佐先輩の顔が、普段の爽やかなものに戻った。 「くくっ、少し虐めすぎたな。ビビった?」 「び、びびりますよ…!どうしちゃったのかと…」 ぷるぷる震えていると、遊佐先輩が優しく俺の頭を撫でる。 「ごめんな、でも本気だから」 「それってどういう…」 「深く考えなくていいよ。まずは氷室のことに集中しな」 「…はい」 そう言うと遊佐先輩は俺の隣から立ち上がって、他の部員のところに行ってしまった。
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