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「突然会いたいなんて言われるからびっくりしたよ。なんかあった?」
「…ううん、お前の顔がなんとなく見たくなっただけ」
複雑な感情をとても説明できそうになかったから、言葉を濁した。だが悠は気にした様子もなく、むしろ俺の気持ちを悟ったように頷いた。
「そっか、俺も颯人に会いたいと思ってたよ。まあいつもだけどね」
「…っ、それで話したいことって?」
「ああ、それなんだけど大学生になっても陸上は続けるでしょ?」
「うん」
悠は何を言い出すんだろう。
「それで入学までに時間があるから、会いてる時間一緒に走らない?身体が鈍らないようにさ」
「おっ、いいなそれ。やる」
二つ返事で返していた。だって断る理由がない。
「そう言ってくれると思った。あとね、俺一人暮らし始めたんだ」
「え?」
「色々あってさ。引っ越したばかりだから一人で寂しいんだ。で、走った後とかに颯人が遊びに来てくれないかなー…なんて」
こちらの反応を伺うように悠が俺の顔をチラッと見た。子犬のような目で見つめられる。
イケメンがその表情ばずるいぞ…お前。
「い、いく」
「ほんと⁉︎嬉しい!」
悠はひまわりのようにニパっと笑う。
…まぁこいつが嬉しいならそれでいいか。
それと、遊佐先輩に言われたから。悠としっかり向き合えって。1人の人間として。
悠との時間を増やすことで、ちゃんと考えるべきだろう。
俺の本当の気持ちは何処にあるのか。
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