自覚

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なんというか…この距離感は色々とマズイ気がする。 そう思って俺は抱きついてくる悠を無理矢理剥がして、ソファーを立った。少し不満そうな顔で悠が俺を見上げる。 「あー、俺もなんか飲み物取ってくる」 「……」 なんでもないように立ち上がったつもりだけど、悠にはバレバレだろう。誤魔化すにしてももう少し上手くやれないのか。 動揺した様子を見せたくなくて、そさくさとキッチンに流れ込む。悠の姿が見えないのを確認してから一息ついた。 「…っは、刺激強すぎ…」 悠に聞こえない声の大きさで呟く。 いつもとは言わないが、徐々に距離感が近くなってるのだ。気のせいかと思ってほっといたら、最近は素肌を密着させてくるまでになってしまった。 悠は体格が俺より一回り大きい。 そんな悠に抱きこまれたら抜け出すのは至難の技だ。大抵いつも抜け出せず、抜け出すタイミングを失って帰るまで抱きしめられたままでいることも多い。 まるでテディベアにでもなったかのような気分だ。 それに最近は抱きしめられていると何か変な気分になるから困っている。首筋にかかる吐息にゾクゾクしてしまう。 もし、押し倒されでもしたら…と考えると恐ろしい。 きっと俺は力が敵わないから抵抗できないだろうし、あの日の夜みたいになってしまうかもしれない。 そしたら、俺たちはまたすれ違ってしまうかもしれない。 この距離感はどうにかした方が良いのではないだろうか。
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