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外を見ると既に夕方だった。色んな意味で疲れたし、そろそろ帰ろう。
今度こそ強制的に悠の膝から立ち上がる。今回は悠もすんなりと離してくれた。そして俺は悠の方を向いて口を開いた。
「今日も楽しかった。ありがとう」
「うん、こちらこそ。次はいつにする?」
「どうせ暇だから、いつでも。悠は?」
「俺も暇だよ。じゃあ明後日は?」
「わかった。じゃあそろそろ帰るわ」
そう言ってペコリとお辞儀すると悠はクスクスと笑った。
「颯人は変なところで礼儀正しいよね。あー、いつものことだけど颯人が帰っちゃうの寂しいなあ」
話しているうちに玄関に着く。俺は屈んで靴を履いた。
「俺も名残惜しいよ」
「…ほんと?」
悠も俺の隣にしゃがみ込み、俺の顔を覗き込んだ。顔が近い。
「ほ、ほんとだよ。ほら、お前の家プライムも見れるし、ゲームも漫画もあるしさ」
「モノが目当て?ほんとにそれだけ?」
うー、あー、めんどくさい!
でも悠が言ってることも本当だ。誤魔化せなくて、俺は意を決して呟いた。
「…あと、お前」
そう言うと、悠はわかりやすくニコっと笑う。
「…俺もだよ!俺も颯人といることが大好き」
「……」
照れて黙っていると、悠の顔がさらに近づいた。
チュッ
頰に柔らかい感触が降りる。まさかと思って悠の顔を見ると、悪戯っ子のように笑っていた。
「もう帰りな。今日は楽しかったよ」
俺はキスされたところを手で押さえ、真っ赤になる。
こいつは、いちいちやることがキザなんだよ!
「…っ、じゃあな!」
転がるようにして悠のマンションを出て行った。
背後で悠が嬉しそうに微笑んでいると知らず。
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