自覚

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「ところで兄貴は最近よく出かけてるみたいだけど。何してんの」 雅樹がチラッとこちらを見る。心なしか真意を探るような目をしている。 「大学まで体が鈍らないようにランニングしてる」 「一人で?」 「いや、悠と」 「にしては帰るの遅くない?」 そこで雅樹がカチャリとスプーンを置いた。いつのまにか皿の上のチャーハンは無くなっていた。 「…そのあと悠と遊んでるんだ。どうせ暇だし」 「どこで」 「悠の…マンション」 なぜだ。なぜか浮気を白状させられているような気持ちになる。やましいことは何もしていないのに。 「随分仲良くなったんだな。前はあんなにギスギスしてたのに」 「あの時は巻き込んでごめん。でも今は大丈夫だから心配しないでくれ」 「心配は、するよ」 え、と思うと雅樹は本当に心配そうな目で俺を見ていた。悠のことは勘付かれていないはずなのに。 「心配って?」 「俺はあの人があまり…信用できないってこと。兄貴を泣かせたことを俺は忘れていない」 泣かせたって…。 確かに、雅樹の前で少し泣いてしまったけど。雅樹にとっては衝撃的なことだったのだろうか。 「ごめんな、お兄ちゃんなのに泣いて。びっくりさせちゃったか?」 戸惑いを誤魔化すようにふざけた口調で雅樹の頭を撫でると、その手をパシッと掴まれた。思いの外力が強くて驚く。 「あんな風に泣く兄貴をもう見たくない。辛くなったらいつでも俺のところに帰ってこい。俺なら絶対に泣かせないから」 見たことない男らしい表情だった。
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