2399人が本棚に入れています
本棚に追加
そしてまた悠との約束の日になった。
いつも通りクタクタになるまで走って、芝生の上で休憩する。
座り込んでぼんやりしていると、頬に冷たいものが触れた。びっくりして見ると、それはよく冷えたサイダーだった。
「今日もお疲れ。これ、俺の奢り」
爽やかな笑顔で悠が俺にサイダーを手渡す。喉が乾いていたのでありがたかった。
「ありがとう。今度俺も何か奢るよ」
「いいって、俺が颯人に奢りたいだけなの」
そう言うと悠は同じサイダーをゴクゴクと喉に流し込む。サイダーのCMにも使えそうなくらいイケメンで、様になっている。
一気に飲むと悠は「ぷはっ」と軽く漏らした。こういうところがイケメンのくせにかわいい。
「ところでさ、今日もうちくる?」
もはや俺がイエスと言うのを前提に聞いてる口調である。ワクワクと仔犬のような目で俺を見ている。
「あー…ごめん、今日は用事があるから…」
俺がそう言うと悠はあからさまに残念そうな顔をした。少し罪悪感が湧く。
「そっか…じゃあ次は?次は遊べる?」
「最近ちょっと忙しくてさ、走ることはできるけどいつ遊べるかは分からない」
「えっ」
「まあ走ることはできるしさ、お互いこれからも頑張ろうよ」
俺の言葉に、悠の目から光が無くなる。
「…やっぱ俺といること嫌だった?」
「え?」
「男のくせに、告白してきたやつと一緒にいて気持ち悪かった?」
悠の表情がどんどん暗くなる。
「そんなわけ…ないだろ」
「いいんだよ、颯人の目を見てたらなんとなく分かるから。前からそうじゃないかなって、薄々思ってた」
悠の言葉を否定したかった。でもできなかった。
俺自身、自分の本当の気持ちが分からなくて、確証がなかったから。
でも悠からそんなふうに言われるのは、何故かとても哀しかった。
「そんなこと…言うなよ」
「…ごめんね。俺、もう帰る」
そう言うと悠はあっという間に駅の方へ消えて行った。
最初のコメントを投稿しよう!