自覚

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やけに見覚えのある通りだった。 それもそのはず、この辺りは悠のマンションがある場所だ。 悠に出会してしまうかもしれない。 そう思っても足が止められない。ついつい悠のマンションの方へ向かってしまう。 大丈夫、マンションの前くらいなら偶々悠に会うことなんてないはずだ。 通りかかるだけ。そう、俺だって偶々ここに来てしまったんだ。 そう思い込むことで自分の行動を正当化する。しばらく会ってないのでついつい好奇心で向かってしまう。 ここだ、この角を曲がったところが悠のマンションだ。 恐る恐る近づく。自分の周りに人がいないことを確認して、角からそっとマンションを覗き込んだ。 えっ マンションの前にはなんと、悠の後ろ姿があった。しかも一人じゃない。悠の腕に絡みつくように、一人の女が悠の隣に立っていた。 茶髪の短い髪をした女は甘えたように悠に話しかける。悠はその女をチラリと見て、何かを言った。 そのまま女は悠の首に腕を絡め、頬にキスをする。 悠は黙ってそれを受け止め、無表情でマンションの中に入っていった。 マンションの前は再び無人になる。 なんだあれ。 なんだあれ。 目の前が真っ赤になっていくのがわかった。動悸が止まらない。 あの人は誰なんだろう。悠の恋人なのか。今から悠の部屋で何をするんだ。 嫌な妄想が止まらない。 さっきの光景が頭からベットリ離れなかった。生々しく光景が蘇る。 あの大きな骨張った手で、あの人に触るのだろうか。 あの薄くて少し固い唇を、あの人と重ねるのだろうか。 あの甘くて優しい瞳で、あの人に愛を囁くのだろうか。 いやだ…いやだ! この瞬間、俺は初めて嫉妬というものを自覚した。
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