自覚

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俺に愛を囁いたその瞳で、他の人を見つめるのが嫌だった。 俺を抱きしめたその腕で、他の人を抱くのが嫌だった。 俺にキスをしたその唇で、他の人と唇を重ねるのが嫌だった。 馬鹿だ、こんな段階になって嫉妬するなんて。こんな遅く気づくなんて。 性的な接触が嫌だとか、陳腐だとかいう前に俺は何も分かっていなかった。 悠が俺以外を選ぶかもしれないという可能性を。悠からの愛情を当たり前のように浴びてきたから、何も分かってなかった。 これが嫉妬か。 ムカムカして、ネットリと底に張り付くような負の感情が止まらない。心なしか呼吸も苦しくなる。 そっか、そっか…。 俺って、悠のことが好きなんだ。 こんなに胸が苦しくなるくらい好きなんだ。 当たり前すぎて気がつかなかった。 悠はあんなにも俺に愛を告げてくれたのに、俺は気付かないふりをして誤魔化してきた。 けどもう誤魔化せない。 俺は悠が好きだ。大好きだ。 気持ちを自覚した瞬間、こんな苦しくなるなんて想ってもなかった。こんなふうに自覚なんてしたくなかった。でもこうでもなきゃ、愚図で鈍感な俺は気づかなかっただろう。 鈍感な俺に嫌気がさして、悠はあの女を選ぶのだろうか。やっぱ男の俺じゃ女には敵わないのだろうか。 気持ちがぐちゃぐちゃになる。 だがそれでも「愛してる」という感情が止まらない。 悠はこんな感情をずっと抱いてきたのだ。 俺がぼんやりしている間に。 ごめんね、ごめんね…悠。 苦しくなってその場に蹲る。 やっと気づいたんだ、お前のことを愛してるって。
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