自覚

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はあ⁉︎何言ってんだこいつ!よりによって悠に! つい有賀のスマホほ奪おうとしてしまったが、先程の有賀の言葉が蘇る。「話を合わせろ」って、こんなこと言ってどうするんだ。 俺が混乱している中でも、有賀は平然と嘘を並べ立てた。 「まーお前がそっちで楽しんでるなら、俺もこっちで楽しませてもらうわ」 すると俺にも聞こえるほどの悠の罵声がスマホから響いた   『っおい、ふざけんじゃねぇよ‼︎颯人に手を出すな‼︎』 悠のこんな乱暴な口調は聞いたことなくて、思わずビクッとする。だが有賀は顔色一つ変えずに、喉をクッと鳴らした。 「あ?どの口が言ってんだ?お前の事情なんか知るか。じゃあ俺はまたそろそろ蒼井と遊ぶから。本当にかわいいよな、蒼井。もっと早くから手を出せばよかったよ」 『やめろ、手を離せ‼︎』 「黙れ、邪魔するな。じゃ、切る」 『おいっ、ちょ!』 無情にも有賀は電話を切った。 俺はというと、呆気にとられて言葉も出ない。なんだったんだ、今の電話…。 「おい、今の…」 「ああ、氷室の言葉遣い酷かっただろ? お前の前だけだよ、あんな優しい言葉遣いなの。他のやつに対してはぶっきらぼうで愛想のない男だ」 「いや、そういうことを聞いてるんじゃない! あんな嘘言ってどうするんだよ!」 「別にいいだろ、お前ら付き合ってるわけじゃないんだから。 浮気でもなんでもないだろ? …それともなんだ、お前は氷室のことが好きなのか?」 有賀の鋭い視線に射竦められ、黙ってしまう。でもこんな言い方してるけど有賀は絶対に分かっている。俺も氷室のことが好きだと。 「はぁ、お前もお前なんだよ。お前らお互い素直になれ。見ている方がイライラする」
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