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「出てやれよ、インターフォン」
おかしそうな顔をして有賀が画面を指差す。だが画面に映る悠の顔はあまりにも必死で、怖かった。
「い、いやいや! 無理です! だって悠めっちゃ怒ってるよ⁉︎」
「くくっ、ちょっと煽りすぎたか? でもあいつにはちょうど良いだろ」
笑いながら有賀がインターフォンに出る。だけど声は笑っていない。
「ずいぶん早いお出ましだったな。まさか女を放置して来たのか?」
『どうでもいい、あんなやつ。それより颯人に会わせろ!開けろ!』
「ったく、しょうがねぇな」
そう一言言うと有賀は解除ボタンを押した。
きっと悠はものすごい速さでこちらに向かってくるだろう。どんな顔をして俺は会えばいいんだ。
悠に嘘をついてしまった気まずさもあるが、悠が女とマンションに入っていく姿に憤る気持ちもある。俺と悠は付き合ってないのだから浮気にはならない。むしろ俺が煮え切らない態度を取ったのが悪いのかもしれない。
けど……。
好きって気持ちを自覚したからには嫉妬が抑えきれない。自分がこんなに嫉妬深いとは思わなかった。
なんで、好きって言ってくれたのに。
俺のこと好きじゃなかったの?
女々しい思考になって嫌になる。こんな俺を見たら、悠は俺のことを嫌いになってしまうだろうか。だからあの女と遊んだのだろうか。
考え込んでいると、有賀が俺の頭に手を置いた。
「一人で考え込んでも仕方ないだろ。今から氷室も来るんだから、二人で話し合え。それから悩んだって遅くない」
「……うん」
その瞬間、ドアがノックされた。
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