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「開けるぞ、いいな」
有賀がドアノブを握りしめ、こちらを見る。まだ少し怖いが覚悟は決まっていた。俺が頷くと有賀はゆっくりとドアを開ける。
ドアが開いた瞬間、悠が部屋になだれ込んできた。
「っ有賀‼︎ ふざけんなよてめぇ‼︎ 颯人はどこだ‼︎」
悠は見たこともない表情で有賀の胸ぐらを掴む。こうしてみると背の高い有賀にも負けないほどの体格だった。
だが有賀は悠の手を振り払って逆に胸ぐらを掴み返す。
「落ち着け‼︎ 蒼井はそこにいるだろ、よく見ろ‼︎」
フーフーと荒い呼吸をしながら悠がこちらを見る。俺の姿を捉えた瞬間、悠は泣きそうな顔をして俺の方に走り、俺を抱きしめた。
「颯人、颯人!大丈夫⁉︎ 何をされた?ごめんね、すぐに来てあげられなくて…!」
「えっ、いや…悠?」
悠は俺をすっぽりと抱き込み、気が動転しているようだった。どうしたら良いかわからず、助けを求めて有賀を見ても、有賀も困った顔をしているだけだった。
仕方ない。
俺は悠の背中をポンポンと叩く。
「悠、俺何もされてないから。さっきの電話は全部嘘だから」
俺の言葉に有賀が頷く。
「そうでもしなきゃお前来ないだろ」
「え、だって…颯人の声が聞こえた…」
「それも違うから。くすぐられただけだから」
「颯人をくすぐったことも許せない」
ムッとした顔で悠が有賀を睨み付ける。だが有賀は素知らぬ顔で無視した。
だがそんなことより俺は悠に言いたいことがある。
俺は悠の頰を引っ叩いた。突然の出来事に悠は呆然としている。
「俺も、悠に問いただしたいことがある。お前、俺のことが好きって言ったよな?」
「…言った」
「あれは嘘か? 俺を弄んでからかっていただけだったのか?」
「そんなわけない‼︎」
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