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「すごく…すごく嫌な気持ちになった。焦った。イライラした。とにかく不愉快だったんだ」
「…ごめん」
「でもな、その不愉快という感情は紛れもなく『嫉妬』だったんだよ。悠が俺以外を選ぶという可能性に、その時初めて気づいたんだよ。与えられて当たり前の甘ったれだったって今なら痛いほどわかる」
よく考えたら、悠は優良物件なのだ。言い方は悪いけど。イケメンだし才能はあるし、欠点がない。
「恋人」として意識した途端急にそんなことに気づいた。
「あのな、あのな。俺…悠のこと、悠のことが…!」
言いかけた途端、悠は俺をギュッと抱きしめた。
悠が俺の背中を撫でる。随分力が入っていたことに気づいた。
「大丈夫だよ、そんなに慌てなくても。俺はどこにも行かないよ。ゆっくりでいいから、言って?」
「俺は、悠のことが…」
「うん」
「好き…です…っ」
蚊の鳴くような声だった。でもこの距離だし伝わったに違いない。でも一度溢れた気持ちは止まらなかった。
「好きだ。そういう意味で大好きだ。こんなに時間がかかったけど、好きなんだ」
悠は何も言わない。
その反応が気になって、俺を抱きしめている悠の顔を見上げた。
「悠…?」
「…っあ、ごめん。ちょっと、整理できなくて…」
悠は泣いていた。
静かに涙を流していた。
「颯人が俺を好きになってくれるなんて、信じられない、ほんとに?本当?」
「本当だ!愛してる」
「…っやばい、颯人が俺のことを好きとか、夢かよ。やっと俺のものになった…!」
悠は泣き笑いで独り言を言う。
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