自覚

45/47
前へ
/188ページ
次へ
手を繋いだまま階段を降りて一階へ行く。相変わらず家の中には人気がなく、静かだった。 すると玄関のノブがカチャリと動く音がした。俺も悠も音のした方を向く。 顔を覗かせたのは和也くんだった。その姿を見て悠が言葉をかける。 「お帰り、和也」 「ただいま…って、あれ」 和也くんが俺の顔をまじまじと見つめた。 「なにも言ってなかったけど、急遽颯人が来たんだ」 「お邪魔してます。久しぶり、和也くん」 「お久しぶりです。今日はどうしてうちに来たの?」 「まぁ…色々あってね」 曖昧に返事をしていると、俺は悠と手を繋ぎっぱなしだったのに気がついた。絶対和也くんにも見られてる。焦って手を離そうとすると、悠は俺の手を強く握りしめて逃さなかった。 和也くんがその様子を見てクスクス笑う。 「ずいぶん二人は仲良くなったんだね。どうしたの?」 「どうしたも何も、まぁこういうことだから」 悠はそう言うと握りしめた俺の手を口元に持っていき、軽くキスをした。 突然の行動に顔が熱くなる。やっぱりこいつはやることがキザだ。 「あーあ、お熱いね。胸焼けがしそう」 「そういう和也くんは、最近どうなの?」 俺はふと和也くんに尋ねる。和也くんといえば「乱れた交友関係」というイメージがあった。 だが和也くんは予想に反して苦々しい顔をする。 「もう恋愛はしばらくいいや。懲り懲りだから」 「小春の件以来いろいろあったみたいでさ。まあ兄としては改心してくれて嬉しいよ」 「それより今は恋愛より留学のことでいっぱいだ」 留学? 和也くんが留学?
/188ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2399人が本棚に入れています
本棚に追加