2399人が本棚に入れています
本棚に追加
手を繋いだまま階段を降りて一階へ行く。相変わらず家の中には人気がなく、静かだった。
すると玄関のノブがカチャリと動く音がした。俺も悠も音のした方を向く。
顔を覗かせたのは和也くんだった。その姿を見て悠が言葉をかける。
「お帰り、和也」
「ただいま…って、あれ」
和也くんが俺の顔をまじまじと見つめた。
「なにも言ってなかったけど、急遽颯人が来たんだ」
「お邪魔してます。久しぶり、和也くん」
「お久しぶりです。今日はどうしてうちに来たの?」
「まぁ…色々あってね」
曖昧に返事をしていると、俺は悠と手を繋ぎっぱなしだったのに気がついた。絶対和也くんにも見られてる。焦って手を離そうとすると、悠は俺の手を強く握りしめて逃さなかった。
和也くんがその様子を見てクスクス笑う。
「ずいぶん二人は仲良くなったんだね。どうしたの?」
「どうしたも何も、まぁこういうことだから」
悠はそう言うと握りしめた俺の手を口元に持っていき、軽くキスをした。
突然の行動に顔が熱くなる。やっぱりこいつはやることがキザだ。
「あーあ、お熱いね。胸焼けがしそう」
「そういう和也くんは、最近どうなの?」
俺はふと和也くんに尋ねる。和也くんといえば「乱れた交友関係」というイメージがあった。
だが和也くんは予想に反して苦々しい顔をする。
「もう恋愛はしばらくいいや。懲り懲りだから」
「小春の件以来いろいろあったみたいでさ。まあ兄としては改心してくれて嬉しいよ」
「それより今は恋愛より留学のことでいっぱいだ」
留学?
和也くんが留学?
最初のコメントを投稿しよう!