自覚

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その後俺は和也くんに別れを言って家を出た。 隣には悠が歩いている。さっき両思いになったばかりで、付き合い始めたばかりで、なんだか気恥ずかしかった。 先ほどから沈黙が続いている。どうしよう、なんか言ったほうがいいのかな。 「あっ、あのさ!」 俺が意を決して声をかけると、悠はこちらを向いて首を傾げた。 「どうしたの?」 「…あー、えっと…好きな食べ物は、なんですか…」 やばい、なに言ってんだ俺。話しかけたけど何を言うかは全然考えてなかった。小学生の自己紹介じゃあるまいし。 悠も少しポカンとした顔で質問に答える。 「え、えっと…アイスかな」 「そっか…冷たいものが好きなのか?」 「まあね。かき氷とかも好き」 「名前の通りだな」 会話が途切れる。なにこの気まずさ。 すると隣で悠がクスクスと笑った。 「颯人は?颯人はなにが好き?」 「甘いもの…特にチーズケーキ」 「うん知ってる」 「じゃあなんで聞いたんだよ」 「気まずくて必死に話題を探してる颯人が可愛いから…かなあ?」 あっ、考えてることがバレてる。 「焦らなくてもさ、気まずくても、一歩ずつ進めばいいよ。俺たちの関係はまだ始まったばかりなんだから」 「うん…そうだな」 「駅着いたよ」 その後俺は手を振って悠と別れた。 夕焼けの車内から外を見る。そこには駅でまだ俺の電車を見つめる悠がいた。 どこか切ないような、どこか嬉しそうな顔をして。 恋人になったんだ。両思いになったんだ。 心がなんだかフワフワする。丸くなってジタバタしたくなる。 目に映る夕焼けのオレンジは、甘酸っぱい色に塗り替えられていった。
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