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「あ、あのさ」
部活終わりの悠に話しかけた。悠はタオルで汗を拭う手を止めてこちらを見る。汗が滴る姿もどことなく艶っぽい…じゃなくて。
「どうしたの?」
「知り合いからこれ…貰ったんだけど。よければ一緒に、行かない?」
嘘だ。
一緒に行きたくて、デートしたくて、コンビニで気がつくと買ってしまった。正直すこし痛い出費だ。でも躊躇しなかった自分が恐ろしい。
「遊園地か。最後に行ったのは小学生以来かもな…。いいよ、俺も颯人と行きたいから一緒に行こう。誘ってくれてありがとう」
「そ、そっか!いつにする?」
「来週の土曜日とかどう?」
「わかった。空けとく」
やばい。一緒に行けるのが嬉しくて、少しテンションが上がってしまった。顔のにやけが止まらない。
遊園地ってすごくデートっぽい気がする。…するよな?
手を繋いだり、恋人らしいことをいっぱいしてみたい。そんなこんなで、もうすこし関係性を進めたい。
いつも走ってばかりだから、たまにはこういうこともいいだろう。そもそもこういうことの方が、本来恋人のすることだろ?
なんだか今からワクワクしてきた。家に帰る足取りが軽い。
家に着いてもテンションは変わらず、雅樹に「気味が悪い」と言われたが俺は全然気にしない。
とにかくその時は純粋に悠とのデートが楽しみで仕方なかった。
まさかあんな展開になるとは知らず。
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