「らしさ」

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「最初に何乗る?」 悠がマップを指差しながら尋ねてきた。コーヒーカップや観覧車、ジェットコースターなど王道のアトラクションが並んでいる。 「うーん…やっぱ最初だしジェットコースターとか、テンションが上がるやつ乗りたいな」 もうとっくにテンション上がってるけどな。 悠は俺の返事に頷いた。 「いいね、俺もそれがいいと思ってた。何種類かあるみたいだけど、どれがいい? 颯人は絶叫系どのくらいいける?」 「俺は全然平気。一番怖いのでもいいくらい。悠は?」 「俺も大丈夫だよ。じゃあ行こうか」 悠が俺の肩を軽く叩いて歩き出す。 俺たちは隣り合って歩いた。手が触れそうなほど近い。だがその手は決して触れることがない。 数センチの距離がやけに遠く感じた。 周りを見ると家族連れから友人グループまで様々だった。 だがどうしても目が行くのはカップル。 みな体を寄せ合って、手を繋いで、微笑みながら歩いている。恋人つなぎの指の絡み合いが、普段より生々しく見えた。 他の人から見たら、俺たちはどのように映っているのだろうか。 友達同士?多分そうだ。 カップルだなんて誰も思わないだろう。 じゃあここで手を繋いだら? どう見られるのだろうか。蔑みの視線を浴びるだろうか。 俺は手を繋ぎたいけど、悠は嫌かもしれない。 ここに来る前はあんなに手を繋いだりする気満々だったのに、いざやろうとするとものすごく怖かった。 周りからの視線を嫌でも気にしてしまう。見られてもないのに、見られているような気がしてくる。 でも恋人らしいことをしてみたかった。
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