「らしさ」

7/29
前へ
/188ページ
次へ
「和也は捻くれちゃったからあんな風に見えるけど、元々は優秀な子なんだ。英語の成績がとくに良くて、今回のイギリス留学も先生からの紹介なんだよ」 「それはすごいな。初めて会った時は全くそんなふうに見えなかった」 「だよね。でも和也の部屋は本でいっぱいだよ」 和也くんの新しい一面を知ることができた。人は見かけによらないものだ。 話を聞くと、一年ほどの留学らしい。 「和也のことだし、帰ってくる頃にはもっと英語ペラペラになってるかも」 なんてふざけたように悠は笑ったが、少し寂しそうな表情をしていた。 俺も弟がいる身としてはとても気持ちがわかる。 初めて雅樹が合宿に行った時、一抹の物悲しさを感じた。ああ、俺の手がかからなくてももう平気なんだって。雅樹が少し遠い存在になった気がした。 今や雅樹の方がしっかりしてるし、頼りになる。弟も成長するものだ。 「大丈夫だ、和也くんはきっと楽しくやるよ。心配しなくて良い」 「ありがとう、颯人にそう言ってもらえると嬉しいよ。そういえば同じ兄同士だね、仲良くやろう」 「おう、今更だろ。そもそも和也くんと雅樹も、俺たちも年齢一緒だろ?すごい偶然だな」 「確かに。運命を感じますよ、颯人くん」 そう言って笑い合った。 二人で話しながら並ぶと時間があっという間にすぎ、ジェットコースターに乗る番が回ってきた。
/188ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2399人が本棚に入れています
本棚に追加