「らしさ」

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ジェットコースターに乗る間、手を繋げないかと試みたが上手くいかなかった。 今のままだと、ただ友達同士で遊びにきたのと雰囲気は同じだ。 なんか、違うな。 なんかもっと…こう。甘い雰囲気を想像していた。カップルが一緒にデートするだけで、そういう雰囲気は自然に出るものだと思っていた。 周りのカップルがやけに眩しく見える。 彼らと俺たちでは何が違うんだろう。 「付き合う」って口先では言ったものの、関係性や行動が伴っていない気がした。 悠はこんなんで満足してくれているのかな。友達みたいなことしかできない俺で、ちゃんと満たされているのかな。なんだかぽっかりと虚しい心待ちなのは俺だけなのかな。 こうやって一緒に歩いているだけで、悠がいかに人の目を引くかが分かってしまう。さっきから周りの人が悠をチラチラ見ている。ヒソヒソと悠を褒める声が聞こえてくる。 今ここで悠の手を握りしめて、俺のものだってアピールしたい。 ああダメだ。 俺って凄くめんどくさい。 自分に自信がなくなるばかりだ。 恋人ってなんなんだろう。 俺が追い求めた「恋人らしさ」ってどうすれば生まれるんだろう。 恋ってもっと甘酸っぱくて、キラキラしているものだと思っていた。 こんなにモヤモヤした仄暗い感情も生まれるって初めて知った。 今こうして隣り合って歩いている間に、俺がこんなことを考えているって悠が知ったら。 俺のことをめんどくさいって、嫌ってしまうのだろうか。
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